生成AIの出力の質は、指示文(プロンプト)で8割が決まります。ただし、複雑なテクニックは必要ありません。業務で使うなら、5つの型を覚えて、社内で共有するだけで十分です。この記事では、そのまま使える型と、社内テンプレートとして育てる方法をまとめます。
結論:良いプロンプトの条件は5つの要素がそろっていること
業務で使えるプロンプトには、共通して次の5要素が入っています。逆に言えば、この5つを埋めれば、誰が書いても一定の品質になります。
| 要素 | 書く内容 | 例 |
|---|---|---|
| 役割 | 誰として答えるか | 建設業の営業事務担当者として |
| 前提 | 会社・読み手・目的 | 取引先の工務店に送る。目的は日程調整 |
| 指示 | 何をしてほしいか(1文で) | 返信メールの下書きを作成してください |
| 形式 | 長さ・構成・文体 | 200字以内、です・ます調、箇条書きなし |
| 制約 | やってはいけないこと | 金額に言及しない。推測で日程を確定しない |
特に抜けやすいのが「制約」です。ここを書かないと、生成AIは足りない情報を自然に補ってしまい、事実と違う内容が混ざります。業務利用では、制約が品質を守る最後の防波堤になります。
業務で使えるプロンプトの型5選

型1:要約型(議事録・資料・長文メール)
最も使用頻度が高い型です。要点は出力の見出しを先に指定すること。指定がないと、毎回違う構成で返ってきます。
- 役割:社内資料を整理する担当者として
- 指示:以下の文章を要約してください
- 形式:「決定事項」「宿題と担当者」「継続検討」の3見出し。各3項目以内の箇条書き
- 制約:本文にない情報を補わない。決まっていない事項は「継続検討」に入れる
型2:下書き型(メール・案内文・お知らせ)
ゼロから書く時間を削る型です。ポイントは読み手と関係性を明示すること。同じ内容でも、初回の相手と長い付き合いの相手では文面が変わります。
- 役割:当社の営業担当として
- 前提:相手は3年取引のある既存顧客。今回は納期変更のお詫びと再提案
- 形式:件名+本文300字以内。冒頭で結論、最後に次のアクション
- 制約:新しい納期は「◯月◯日」と空欄にして、こちらで埋められる形にする
制約の書き方が実務的なコツです。確定していない情報は空欄で返させると、誤った日付や金額が入る事故を防げます。
型3:分類型(問い合わせ・アンケート・日報)
大量のテキストを仕分ける型です。分類のカテゴリを自分で決めて渡すのが必須条件になります。AIに考えさせると、毎回カテゴリが変わって集計できません。
- 指示:以下の問い合わせを分類してください
- 形式:「見積依頼」「不具合」「納期確認」「その他」の4分類。表形式で、分類・要約1行・緊急度(高中低)
- 制約:4分類以外を作らない。判断できないものは「その他」に入れる
型4:たたき台型(企画・提案・研修計画)
ゼロから考える負荷を下げる型です。完成品を求めず、選択肢を複数出させて人が選ぶ使い方にすると成果が安定します。
- 指示:以下の条件で企画案を3つ出してください
- 形式:各案につき「狙い・内容・想定される懸念」を各2行
- 制約:具体的な数値目標は入れない(社内で決めるため)。実在しない事例を挙げない
型5:チェック型(誤字・抜け漏れ・条件確認)
人が見落としやすい確認作業を補助する型です。チェック項目を明示することが前提で、「おかしいところを教えて」では機能しません。
- 指示:以下の文書を、下記の観点で確認してください
- 形式:観点ごとに「該当箇所・指摘内容」の表
- 観点:日付の整合性/敬語の誤り/数値の単位/宛名と本文の不一致
- 制約:文章表現の好みに関する指摘はしない
最後の制約がないと、指摘が大量に出て確認の手間が増えます。見てほしくない観点を書くのも、実務では重要なテクニックです。
出力が安定しないときの5つの直し方
| 症状 | 原因 | 直し方 |
|---|---|---|
| 毎回構成が変わる | 出力形式を指定していない | 見出し名を列挙して指定する |
| 長すぎる | 文字数の指定がない | 「200字以内」と数値で指定する |
| 事実と違う内容が混ざる | 制約がない | 「本文にない情報を補わない」を追加する |
| 当たり障りのない内容になる | 前提情報が足りない | 業種・読み手・目的を1行ずつ足す |
| 指示を一部無視される | 1つの指示に要求を詰め込みすぎ | 作業を2回に分ける(要約→整形) |
最後の項目は見落とされがちです。1回のやり取りに複数の作業を入れない。要約と翻訳と体裁調整を一度に頼むより、3回に分けたほうが結果は安定します。
プロンプトを「個人技」で終わらせない社内共有の仕組み
制作・開発の現場から言うと、AI活用が定着している会社とそうでない会社の差は、テクニックの差ではありません。うまくいった指示文が社内に残っているかどうかです。
共有の仕組みは、凝ったものでなくて構いません。次の3列の表を1つ作るだけで機能します。
| 列 | 入れる内容 |
|---|---|
| 業務名 | 議事録の要約、問い合わせの分類 など |
| プロンプト本文 | そのままコピーして使える完成形 |
| 注意点 | この指示文で起きたミス、確認が必要な箇所 |
3列目があることで、単なるコピー元ではなく失敗の記録が残る資産になります。担当者が代わっても同じ品質を保てるようになります。この積み重ねが定着につながります(詳細は生成AIが社内で使われない5つの原因と定着させる方法)。
プロンプトに入れてはいけない情報
指示文の技術以前に、入力してよい情報の線引きが必要です。一般的に、次のような情報は入力を避けるのが安全です。

- 顧客・取引先の氏名、連絡先、住所
- 見積金額、原価、取引条件
- 未公開の計画、人事情報
- ID・パスワード・APIキー
必要な場合は、氏名を「A社」「担当者B」に置き換えてから渡します。線引きの決め方は生成AIの情報漏洩を防ぐ社内ルールの作り方【6項目】にまとめています。
そのまま使えるプロンプト例文3本
型の説明だけでは使い始めにくいため、完成形の例を3つ挙げます。自社の業種・読み手に合わせて、太字部分を差し替えてください。
例文1:問い合わせメールの返信下書き
あなたは建設資材の販売会社の営業事務担当者です。以下の問い合わせメールに対する返信の下書きを作成してください。
【前提】相手は初めてお問い合わせいただいた法人のご担当者です。目的は、必要事項をうかがったうえで見積のご案内につなげることです。
【形式】件名と本文。本文は250字以内。冒頭でお礼と結論、中盤で確認したい事項を3点まで箇条書き、末尾に次のご案内。です・ます調。
【制約】金額・納期には触れないでください。確認できていない情報を推測で書かないでください。判断が必要な箇所は「◯◯(要確認)」と記載してください。
例文2:日報の要約と課題の抽出
あなたは製造業の管理部門の担当者です。以下の日報を要約してください。
【形式】「今週の進捗」「発生した問題」「来週の予定」の3つの見出し。各3項目以内の箇条書き。1項目は40字以内。
【制約】日報に書かれていない内容を補わないでください。原因が明記されていない問題は、原因を推測せず事実のみ記載してください。同じ内容が複数の日報にある場合はまとめてください。
例文3:見積書の記載内容チェック
以下の見積書の記載内容を、下記の観点だけで確認してください。
【観点】(1)日付の整合性(作成日と有効期限)(2)宛名と本文中の会社名の一致 (3)数量と単位の記載漏れ (4)小計・消費税・合計の計算の整合 (5)敬語の誤り
【形式】観点ごとに「該当箇所」「指摘内容」の表。問題がない観点は「問題なし」と記載。
【制約】文章表現の好みに関する指摘はしないでください。金額の妥当性については判断しないでください。
3つに共通するのは、制約が指示と同じくらいの分量を占めている点です。何をしてほしいかより、何をしてほしくないかを書くほうが、業務での出力は安定します。
例文を自社用に育てる手順
- まずそのまま使い、出力を確認する
- 気になった点を「制約」に1行足す(例:社名は正式名称で書く)
- 3回使って安定したら、共有ドキュメントに登録する
- ミスが起きたら、その内容を「注意点」の列に追記する
この4ステップを回すと、指示文が自社の業務ルールを吸収した資産に育ちます。最初から完璧な指示文を作ろうとしないでください。
よくある質問
Q1. プロンプトは長いほうがよいのですか?
長さではなく、5要素(役割・前提・指示・形式・制約)がそろっているかどうかです。要素が入っていれば5行でも十分機能します。逆に、要素が抜けたまま長く書いても出力は安定しません。
Q2. 英語で書いたほうが精度は上がりますか?
日本語の業務文書を扱うなら、日本語で書いて問題ありません。翻訳の手間をかけるより、前提と制約を丁寧に書くほうが効果が大きくなります。
Q3. 毎回同じ指示文を貼るのが面倒です。
定型文はテキストファイルや共有ドキュメントに置き、コピーして使う運用が基本です。使用頻度が高い業務は、入力欄と出力形式を固定した仕組みにしてしまう方法もあります(既製ツールと自社開発の判断基準)。
Q4. 出力の内容が本当に正しいか、どう確認すればよいですか?
数値・固有名詞・法令・日付の4つは、必ず元の資料や一次情報で確認してください。この4項目以外は、読んで違和感がないかの確認で実務上は足ります。
まとめ:5要素と5つの型を、社内の共有資産にする
業務で使えるプロンプトは、役割・前提・指示・形式・制約の5要素で組み立てます。要約、下書き、分類、たたき台、チェックの5つの型を押さえれば、日常業務の大半はカバーできます。あとは、うまくいった指示文を表に残すだけです。
スゴヨクAIでは、業務ごとの指示文の設計から、仕組みへの落とし込みまで支援しています。AI業務効率化の支援内容をご覧いただくか、お問い合わせからご相談ください。休業日以外は24時間以内にご返信します。
